Tokyo Classic

ブランド-商標。銘柄。


それは駅のプラットホームで雨のように浴びせられます。
秋の天気は電車のアナウンスが告げられるまでは心地よいものです。
「次の電車は30分遅れで到着する予定です」
すると乗客はフィンランドの鉄道会社VR-Yhtymä Oy(VR)のオフィスに向かい、
職員に対してどうして遅れているのかという不満を口にします。
実際のところVRではほとんど定刻通りの運行が実施されていて、
昨年は89.4%の電車が時刻表通りの運行でした。
しかしこの事実は同社のブランド力の落ち込みから救うものではなく、
ヘルシンキ中央駅にある石像でさえも、どうすることも出来ません。


ブランド力の損失は会社にとって非常にコストが掛かる場合があります。
たとえば先程のVRの場合、
乗客は計画を立てやすくするために移動を車に切り替えるかもしれません。
ブランドの金銭的価値について語られることは多くありますが、
ブランドイメージや評判が経済的重要性を持っているのでしょうか?
ブランディングの専門家はこう説明します。
ウォッカを販売する2つの会社、FinlandiaとAbsoluから見てみましょう。
それぞれFinlandiaは60億EUR(6840億円)、Absoluは数百万EURの売り上げを挙げています。
どちらもボトルの中身は同じものを販売していますが、
ブランド力によってその差が生まれています」


調査会社Millward Brownが今年発表したものでは、
フィンランド経済を支える電気通信機器企業のNokiaは、
150億USD(1兆2150億円)の価値があるとされています。
これは前年と比較するとブランド価値が58%、200億USD(1兆6200億円)低下したことになります。
理由としてはNokiaスマートフォン市場で苦戦していることが挙げられ、
それにより今春に2度に渡り業績予想の下方修正を行い、株価も1年で25%値を下げています。
つまりブランドイメージと経済的な成功は密接な関係にあるといえます。
「ブランド力は会社が功績を生むことに役立ちます。
つまりそれは売り上げを伸ばすことに繋がっています。
だから企業は計画的かつ組織的な方法でブランドを管理する必要があるのです」
と経済大学の研究者は述べています。


ただブランドというものは簡単に壊れてしまうものでもあります。
Aalto大学で経済学部教授はブランド崩壊には2通り、
時間をかけて浸食するものと危機によって破壊されるもののがあると言います。
「時間をかけてブランド力が悪化する場合には問題点が多く、
ブランド・製品あるいは運営そのものに問題が生じていることもあり、
そこから立て直すのはとても難しいことだと言えます」
彼女は大企業であればあるほどそれは困難になると付け加えます。
フィンランド人は企業が玉砕されそうになったとき、
消費者を介してブランドを後押しする慣習があります。
Nokiaもまた新製品と共に前進を図ることでしょう」


万が一問題が発生した場合には、
会社のリーダーは早急にその問題に対する明確な姿勢を打ち出す必要があります。
「顧客と交流を図ることはとても重要なことです。
象牙の塔からニュースを配布するなんて事はするべきではなく、
ブランドは常に前向きな姿勢を見せる必要があります」
「例えば、メキシコ湾で原油流出事故を起こしたBP oilの社長は
直ぐには公の場に表れようとはしませんでしたが、その間に悪い報告が続々と増加していきました」
ブランディングの専門家は言います。


とどのつまり、ブランドは企業の売り上げには拍車をかけますが、
そのイメージまでは救うことは出来ません。
企業が正常に機能している場合にのみ、ブランドは有効だともいえます。
「卵の殻にひびが入ったのなら直すことが出来ますが、
内部から腐敗しているのなら救出することは不可能なことです」
と教授は言います。
ブランドイメージを修正する際、早急な対応は最も良い方法です。
冒頭の場面では、利用者は企業側の回答を待とうとはせず、
その代わりとして自分自身で電車の遅れの理由を考えようとします。
「企業は顧客の立場となって議論に参加して回答する必要があります」
彼女によると、VRはこの冬の問題に対しての対応が遅すぎたとしています。
「雪は何回も乗客に驚きを与えていました」


あなたは水を飲もうとしています。
あなたが飲んでいるのはブランドですか?あるいは水ですか?
Tokyo Classic / RIP SLYME 2002年