トゥイギー・トゥイギー

美醜


もしファッションモデルになりたいのなら、
見た目の美しさや高身長だけでなく、不健康に細い身体が必要とされます。
2月に北欧最大のファッションイベントCopenhagen Fashion Week(CFW)が開催されているとき、
Danmarks Radio(DR,デンマーク放送協会)は、
国内のモデルの摂食障害問題に焦点を当てた番組を放送しました。
番組の中で報告された昨年の8月の同イベント後に実施したモデルのBMIテストでは、
27人中正常値は1人だけ、26人は痩せすぎという結果が明らかにされています。
そして摂食障害に対するモデル事務所や業界の支援の無さを指摘しています。
また元モデルの女性は現役当時身長172cmで体重は44kgだったことを明かしています。
これはWHOが定義するBMI値で飢餓以下の数字です。
「3年間生理がない日が続きました。
痩せるために毎日ほとんど食べることはありませんでした」
と彼女は語っています。


世界各地で行われるファッションイベントに参加するには、
モデルは外見への圧力、特に自分の体重に対する要求に耐えなければいけません。
「イベント開幕1週間前にモデルに質問したところ、
何人かは体重を減らすようにと言われたようです。
やはりこの問題はこれからも継続して強調して行く必要があるようです」
と未成年の摂食障害等に反対する協会の会長は言います。


このような見方がある一方で、デンマークを含む多くの国のデザイナーは、
細身のモデル、そして極端に細いモデルの起用を好んでいるように映ります。
これからもこうしたファッションが続くのでしょうか。


「個人的には極端に細い女の子には興味ありません。
私のデザインには合わないし、服もフィットしないでしょう」
とあるデンマークブランドのデザイナーは言います。
彼女は発表会で38号の服を準備しましたが、
国内のモデル事務所にはこれを着こなせる人材は居ませんでした。
それでもその服を制作した理由として、彼女はこのサイズをヒューマンサイズを呼び、
イベントに参加した一般人の中にはこれを着用できる機会があると思ったからです。
「私は実際に服を着る人をイメージして服を制作するので、
彼らの身体全体を把握している必要があります。
食欲不振を感じさせる女性は私の理想ではありません。
細すぎるモデルは私のイベントには相応しくないのです」。


デンマークでは16歳未満のモデル活動については倫理憲章により両親の同意が必要となっていますが、
実際には13歳のモデルがいるように年齢制限はありません。
また最低体重の規則やBMI値による制限も存在しません。
未成年の段階から極端に細身の体型を維持することは、
将来子どもを産みにくくなるというデータも存在しています。
外国のイベントでは、数年前にモデルが死亡したことで厳格な規則を設けたところもあり、
スペインではBMI値が18.5を下回るモデルは舞台に上がることはできません。


政治家もこの件に関して注意を向けているようです。
ある議員は、BMI値で倫理的な数字を満たしていないモデルの起用が続くのであれば、
政府からのFashion Weekへの支援金を無くす、と発言しています。
またコペンハーゲン市長もファッション界の現状に批判的です。
若い女性が自分自身を飢えさせてまでモデルになろうとする姿は耐え難いものです。
夢を叶えるために自らの健康に暴力的になることは極めて不当なことです」。


拒食症研究の第一人者で国立病院のコンサルタントでもある人物も、
何らかの制約が必要と考えています。
「法律や規則が設けられても、それでも生命の問題を解決することは出来ません。
政治家がモデルのBMI値を監視することが出来るでしょうか?
求められているのはファッション業界だけの変化ではなく、
社会全体の体重や体型への意識に対する変化なのです」。


そして、協会とファッション業界による度重なる協議の末、
CFWでは16歳未満のモデルの起用を禁止することが決まりました。
この協議ではイベント側はモデルには栄養に優れ健康的な食事を提供すること、
業界は不健康なモデルをいち早く発見できるよう健康診断を強化する、
といった確認がされています。


美意識変えてみませんか。

トゥイギー・トゥイギー / Pizzicato Five 1991年