Symmetry Of Empty Space

景色が変わるのか。 hs.fi


ノルウェーの首都オスロの中心地に隣接するGrønland地区は、
移民が多く暮らすところとして知られています。
店のドアは絶えず働き続け、市場の屋台には沢山の商品が陳列され、
そしてレストランには人が溢れています。
あのテロ事件以前とほとんど変わりない風景がそこにはあります。
唯一、窓にお悔やみの言葉が書かれていることを除いては。


地下鉄の駅で警備員の仕事をしている男性は
「あの爆発は少し遠くのようで起きたような気がした。
雷が角にある市場に落ちたように聞こえて、工事をしていた天井が落っこちてきました」
と言って、通りの向かい側の店を指さしました。
ここでは怪我人は出ませんでしたが、通りにいた人々は誰もが恐怖に怯えていました。
それを物語るように周辺の店の多くは通常の営業時間よりも早くに店を閉めました。
この男性の彼女はその時市場で働いていましたが、急いで店を閉めてタクシーで家に帰りました。
男性が言うには、ここでは直ぐにすべてが以前のように戻ったようです。
「ここの住民の大半はソマリアからで、
それ以外でも戦争で荒廃した地域から来た人々ばかりです。
それらの大半の人は、今回の爆発事件に対して言及することはなにもない、
と話しています」。


犯人が反移民を主張する極右活動家と判明したとき、
市場の人々はGrønlandが恰好の標的になる可能性を口にしていたといいます。
オスロでこの地区以上に移民の割合が高い場所は他にないからです。
「仕事の性質上、この事件を十分に考慮する必要があります。
攻撃が仕掛けられることも十分にあり得ることでしょう。
それらの恐怖を拒みたい」。
彼は6歳の時にパキスタンからノルウェーへと移り住みました。
彼の親戚はイスラマバードで暮らしていますが、
その周辺では今年だけでも多くのテロ事件が発生しています。
「普段は私が母国に暮らす親類を心配する側でした。
例えば列車事故ノルウェーで起きた場合にはまず死者は出ません。
ただ7月22日の出来事は、親類を心配させるほどの衝撃でした」。


理髪店の前にいた男性は、
あの虐殺はノルウェー人が移民に対する態度を変えるきっかけになると考えています。
「彼らは事件発生直後にムスリムによるテロ攻撃やアルカイダの関与を疑いましたが、
そうしたことに罪悪感を持っているはずです。
誰もノルウェー人による犯行とは考えていませんでしたから」。
19年前にスリランカから来たこの男性は、
次にこの国で何が起きるのかが問題だとしています。
彼は移民の議論が大きな変化に向かいつつあると感じています。
「あの悲劇は規則を変えるだろう」。


ソマリア出身でこの国に暮らす友人を訪ねている男性はこう言います。
「あの攻撃の対象が未成年だったという事実に言葉が出ません。
命はなによりも大切なものです」。
彼はテロ事件による日常生活の変化は起きていないとして、
また新たな攻撃に対する恐怖もないといいます。
「死に迫られたら、そうするだけです。神のみぞ知るです」。


ノルウェーは昨年1年間で73850人の外国人を受け入れました。
1980〜90年代後半までの移民の特徴はイランやスリランカ
コソボといった戦争・内戦難民が大半を占めていましたが、
2000年代以降はドイツやスウェーデンからの労働者移民が多くなっています。
なかでもポーランド系は現在では6万人を超える国内最大のグループになっています。


意識が変わるのか。

Symmetry Of Empty Space / Silje Nes 2010年