Waka Waka

ワールドカップに出場する人は国を代表する選手の集まりです。


デンマーク代表がワールドカップに初出場したのは1986年のメキシコ大会です。
初戦のスコットランド勝利すると、ウルグアイには6-1と快勝、
西ドイツにも勝って予選リーグ3戦全勝で突破します。
結局トーナメント初戦でスペインに敗れましたが、
そのトータルフットボールのような芸術的なサッカーに世界から称賛の声が挙がります。
国の風土に根付いた自由がデンマーク代表のサッカーに美しさを与えていました。
その一方で、この大会準優勝に輝いた西ドイツの動きは退屈なものでした。
西ドイツの機械的で身体の強さを前面に押し出したサッカーは、
政治イデオロギーとは全く異なるものであったことは皮肉にも見えました。


時代は流れて2010年、その立場は逆転しました。
ドイツは新世代が台頭してサッカーに新たな要素を吹き込み大輪の花を咲かせています。
これは現実の政治の世界を表しているようにも見えます。
デンマークは北欧のみならずヨーロッパを通してみても、
移民に対して厳しい政策を採用する国として知られています。
隣人から見れば排外主義とも取れる政策や国の方針は、
主にムスリムへの偏見を抱かせるのには十分なものといえます。


それはもちろんデンマークサッカー界にも当てはまることです。
メディアは近年、同じ質問を繰り返してきました。
「なぜZlatan(Ibrahimović)が居ないのか?」
これはつまり、隣国スウェーデンでは彼のような移民系の選手が主力として活躍しているのに、
どうしてデンマークには登場してこないのか?という問いです。
2007年の同国サッカー協会の調査では、年代別代表で移民背景を持つ人の割合は6%でした。
それ以降少し数字は上がっていますが、スウェーデンの28%、
1995年の調査で40%を記録したノルウェーと比較すると低い水準といえます。


それは単にその選手が戦術的技術や規律性に欠ける面があるのかもしれません。
しかしながら国民性や政策を加味すると、こうとも言えます。
「なぜ移民背景を持つ選手を育てることが出来ないのか?
デンマークの文化や価値観に問題はないのか?」


隣国ドイツは1999年に市民権に対する態度を軟化させました。
ここ数年サッカー年代別代表による欧州選手権を制するなど好調で、
今大会も、ブレイクしたMesut Özilを含めた11人の移民背景を持つ選手が出場しています。
Zinedine ZidaneやIbrahimovićがヨーロッパ統合における諸問題を解決するとは思えません。
しかし彼らのような存在すら登場しないデンマークは時代錯誤のようにも映ります。


ただこうした意見に反対の人は多いことでしょう。
例えばノルウェー代表はここ3大会ワールドカップ出場権を逃しているように、
決してヨーロッパの中でも、また世界的に見ても強豪とはいえません。
そしてデンマーク代表も本大会出場回数こそ少ないですが、
決勝トーナメント進出を逃したのは今回が初めてで弱小国ではありません。
更に言えば、そもそも移民とサッカー代表の成績に関係性があるのでしょうか?


その国の政治がサッカーを含めたスポーツに影響を与えることは間違いありません。
今回のワールドカップでピッチに立った彼らが国を代表して国際舞台に立っているのは間違いなく、
彼らを通してその国のことを知る人も多くいることでしょう。
ただ政治的なことを含めたあらゆるものを彼らに背負わせるのは、
酷なことであり無理なことだといえるでしょう。


アフリカの大会ではなく南アフリカの大会です。