アイデンティティ

私たちと彼らの間にあるものはなんでしょうか?


フィンランドでは他のヨーロッパ諸国同様に、
移民の受け入れを制限して「普通の生活」に戻るべきだという風潮があります。
「これは間違った考えです。
移住を制限したところで移民の生活が終わるものではありません。
この国の人は外国人が国のなかでどのように変化するのか議論すべきです。
フィンランドではこれまで以上に外国語市民と非キリスト教徒が増加するでしょう。」
文化人類学の教授は言います。
フィンランドには2009年の地点で155,660人の外国人が暮らしています。
言語別に外国人を集計するとロシア語の話し手が51,683人、
次にエストニア語:25,096人、英語:12063人と続いています。


フィンランド第二次世界大戦以前は多くの移民を抱えていましたが
戦後は大幅に減少していました。
代わりにフィンランド人が職を求めてスウェーデンに移住するほどでした。
その流れが変わったのは1980年代のことです。
「主に3つの要素が挙げられます。
ソ連の崩壊によって境界が開き、東西冷戦が終了しました。
そしてイラク戦争ユーゴスラビアの危機による難民が、
フィンランドを含む西欧へ押し寄せてきました。
その間にフィンランドが成長したことで仕事を求める人や、
亡命者達の目的地となったことで移民が増えているのです」


移民と言ってもそれぞれ傾向があるようで、
ロシア系は自らの文化や言語を維持しようとしますが、
エストニア系はフィンランドとの融合に積極的です。
それも影響して彼らは労働市場においてロシア系やソマリア系よりも優位な立場にいます。
移民のそれぞれのグループにはフィンランド語の理解力に差があり、
フィンランド語が話すことが出来なければ仕事を見つけることは困難だといえます。


移民にとって出身地の文化や伝統的宗教は、アイデンティティーを語る上で重要なものです。
それを移民の子どもである2世代目や3世代目が、
多数派・少数派問わずにフィンランドでどのように形成していくのかが注目されます。
「ロシア系やソマリア系はこの国と融合しようとするかあるいは隔離を選択するでしょう。
彼らが将来何語を話しているのか。
これは彼らに家族が出来たとき、子どもが成長したときに直面する問題です」


多くの選択肢を与えられる社会でありたい。