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投票率82%が突き付けた答えとは。


9月19日スウェーデンでは総選挙(定数349)が行われました。

  • 以下は選挙結果です(政党名につく国名は省略)。 
政党名(日本語名) 連合名 選挙前議席 得票率(%) 獲得議席
Socialdemokraterna(社会民主労働党) 赤緑(野党) 130 30.7 112
Moderaterna(穏健党) 連合(与党) 97 30 107
Miljöpartiet de Gröna(緑の党) 赤緑(野党) 19 7.2 25
Folkpartiet liberalerna(自由党) 連合(与党) 28 7.1 24
Centerpartiet(中央党) 連合(与党) 29 6.6 23
Sverigedemokraterna(民主党) 独立 0 5.7 20
Kristdemokraterna(キリスト教民主党) 連合(与党) 24 5.6 19
Vänsterpartiet(左翼党) 赤緑(野党) 22 5.6 19


Mona Sahlin率いるSocialdemokraterna(社会民主労働党)を中心とした野党連合は、
投票前議席数の171議席(得票率46.08)から156議席(同43.6)と大きく後退しています。
特に社会民主労働党は得票率を前回の35.3%から30.7%と大きく落とし歴史的な敗北となりました。
80年間この国を支配して「ゆりかごから墓場まで」と言われる福祉国家を築いた担い手は、
今回の選挙結果でその役割に終わりを告げられたかたちになりました。


反対に大きく躍進したのはJimmie Åkessonを党首とするSverigedemokraterna(スウェーデン民主党)で、
0議席(同2.9%)から20議席(同5.7%)を獲得し初の議会進出を果たしています。
極右とも称される政治主張を掲げる民主党は、
前回の選挙でも獲得議席が0と注目に値する政党ではありませんでした。
しかし金融危機後の世論調査で急激に支持を伸ばしたことで議席獲得が現実的になり、
今年に入ってからの調査ではその数が議論の的となっていました。


Fredrik Reinfeldt首相が率いるModeraterna(穏健党)を中心とした与党連合は、
178議席(投票率48.24%)から獲得議席を173(同49.3%)とし過半数には達しませんでしたが、
与党の座は維持することは確実視されています。
選挙前にも「極右とは手を組まない」と述べていたように
民主党との協力関係を持つことを改めて否定したReinfeldt首相は、
緑の党に連携を求める考えを明かしています。


スウェーデンメディアはこの選挙結果、つまり、
極右政党が初めて議会の議席を獲得、中道右派連合の過半数割れ
長年与党であった社会民主労働党の惨敗は、この国の政治の終焉だと評しています。
『Dagens Nyheter』紙は
「連合の勝利は長年政治支配を続けてきた社会民主労働党に終わりを告げた。
今回の選挙結果でおもしろくない点は民主党の躍進」と伝えています。
『The Svenska Dagbladet』は国民が新しい国家を描き出した結果だとして
中道右派政府は過半数に届かず、社会民主労働党が崩壊した一方で、
極右的な思想を持つ民主党キングメーカーになった」と書いています。


明けて月曜日、民主党が躍進した選挙結果を受けて、
首都ストックホルムに1万人が集結し人種差別に反対するデモを行いました。
5000人が集まったGöteborgやMalmöでも同様なデモが開催されています。
集まった市民は反移民政策をとる民主党に対して「議会に人種差別主義者はいらない」
「私たちは恥ずかしい」と書かれたプラカードを手に抗議活動を行いました。



欧米に広がる移民への不信感が各国の選挙結果として現れています。
それは福祉先進地域である北欧でも例外ではなく、
デンマークや今回のスウェーデンでも極右政党が躍進する事態になっています。
これはグローバルへの懐疑なのか、それともローカルへの回帰なのか。
民主主義の観点から見れば、この結果は正しいということになりますが、
でもその正しさというのは一体何でしょうか?
疑問は尽きません。