飾りじゃないのよ涙は

苦悩の告白


大学でアラビア語を教えているその女性は、デンマークで生まれデンマークで育ちました。
イラク訛りのアラビア語をとても流暢に話す彼女は43歳、
30年近く前に初めてスカーフをして以来毎日それを着用しています。
ただ彼女の友人はデンマーク人の改宗者ではない人だということです。
「改宗した他のデンマーク人とはあまり関係をもっていません。
子供の世話やテレビを見て1日を家で過ごすことは、私の送りたい生活ではありません」


彼女は6年前からデンマークの大学で授業を受け持っていますが、
それでも趣味の旅行で多くのアラブ諸国を訪れています。
デンマークの改宗者や私の教える学生の中には、
私のことを貧しいムスリムの代表だと見る人がいます。
そして彼らは私のことを敬虔なムスリマではないと言ってきます。
だけど私個人の意見とすれば、
デンマークの女性が家庭に入るという決断するのは、
現代社会から逃げ出したいと考えているからだと思います。
それは社会的役割から開放されたいと思う安易な発想だと思う」


彼女は移民とムスリムの移民との間にも誤解があると感じています。
彼女はイラク人の男性と結婚してイラクへ移住したとき、
「人生の転換が起きた」というほどの体験をします。
「私はアラビア語を学ぶために8年間イラクに滞在しました。
女性は当時の政権下では非常に厳しい状況に置かれていましたが、
そこでエンジニアや医師として働く強い女性たちから私は多くのことを学びました。
デンマークに住むムスリマの多くは家に居ますが、
イラクで活動的な生活を送る彼女たちを見て驚いたのを覚えています」


彼女はムスリムが置かれている今日の状況下で一番問題なことは、
未知への恐怖だと言います。
「私たちは彼らが理解してくれないことを恐れていて、
そして私たちもまたデンマークの文化や社会を恐れています。
このような状態は特に子どもにとっては大きな負担でしかなく、
二つの社会の間で上手く均等を保とうと試みますが結局失敗に終わる人が多くいます」


「地域社会にも問題があることは確かですが、
我々もいつまでも社会の被害者という認識でいることは間違いだと思う。
それとは異なる意思表示をすることで立場を主張する必要があります」
と彼女は言います。
デンマークの刑務所にいる囚人のほとんどはアラブ系だと言われています。
それは何故か?
他の少数移民で同じようなことが言われていないことから、
実際にアラブ系の人が多いということでしょう」


彼女は社会にとけ込むことの重要性を何度も強調しました。
「例えばアラブ系の家に行ったとしましょう。
本棚にはコーランと共に他の宗教の本が並べられてはいるけれど、
彼らはそれを読むことが出来ないでしょう。
そこに陳列されるだけの好奇心しか持ち合わせていないのであれば、
賢い道での社会への統合は難しいかもしれません」



ここ数日間、欧米の渡航者に対してテロに警戒するよう注意情報が出されています。
そしてアメリカ政府は「テロ計画の情報を掴んだ」ともしています。
実際に何かが起きるかもしれません。何も起こらないかもしれません。
ただこれが市民の抱く未知への恐怖を増幅させたことは確実です。