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東北関東大震災を北欧各国はどう伝え、どのような影響をもたらしたのか。


北欧各国は地震直後から速報を伝え、NHKの国際放送を介して津波の状況を放送しました。
そこから3日間前後は媒体を問わずトップニュース扱いが続き、
それ以降も福島原子力発電所の状況は詳しく報じられるなど、
この地震は各国で大きく取り扱われていました。
デンマークの新聞社『Berlingske』『Jyllands-Posten』は特派員を被災地へと送り、
壊滅的な現地の状況を伝えています。
その他のメディアは日本に在留する人と接触を図り、
地震の様子や日本政府や市民の対応といった様々な情報を報じています。


各地で震災の余波が広がっています。
アイスランドの首都レイキャヴィークでは、
福島第一原発から放出されたと思われる微量の放射性物質を観測されました。
その後スウェーデンでも確認されています。
原子力発電所事故による放射能への懸念が強まった影響から、
フィンランドの薬局ではヨウ素剤が品薄になる事態が起きています。
ノルウェーでは、核物理学者と同国赤十字社代表が、
メディアが市民に対して必要以上に放射能の恐怖を煽り、
人道支援から放射能問題へ視線を逸らそうとしているとして、
これらを残念な行為だと語っています。
経済的な波紋も広がり、スウェーデン市場では3.35%株価を落とし、
デンマーク投資ファンドも日本市場で10%の損失を出したということです。


デンマーク赤十字社義援金の呼びかけを行った結果、
地震発生から5日間で120万DKK(1800万円)が集まりました。
5日間で600万DKK(9000万円)を集めたハイチ地震と比較すると、
関心が低いようにも見えます。
「この金額は我々が想定していたものよりも少ない結果でした。
ハイチの場合、彼らは貧しいために、災害に対応するためのすべてが欠如していました。
日本は豊かで多くの救援組織や資金を有しています。
この差は人々が募金をする際に大きな判断材料になります」
と同社の資金調達部門の責任者は言います。
デンマーク原子力発電を利用していませんが、
首都コペンハーゲンにほど近い場所にスウェーデンのBarsebäck発電所(活動停止)が存在しているため、
原子力発電についての議論が熱を帯びています。


スウェーデンのFredrik Reinfeldt首相は訪問先のリトアニア
原子力発電がリスクを伴うものであることは認識しています。
ただ、あらゆる発電システムは環境に何らかの影響を与えている、そのことも強調したい」と述べ、
同国の原子力政策を見直す考えはないことを明らかにしています。
スウェーデンには現在原子力発電所が3カ所10基存在します。
同国ではアメリカで起きたスリーマイル島事故を受けて1980年に国民投票が行われ、
新たな原子炉の建設禁止、そして稼働中のものを段階的に廃止することを決めました。
しかし近年は国民の間にも原子力容認が多数を占めつつあり、
昨年のGöteborg大学が行った調査では51%が建設賛成、反対は31%でした。
こうした背景もあり、昨年議会は新規原発の建設許可を出しています。
ただ、震災後に『Dagens Nyheter』紙が行った世論調査では、
原発新設賛成派が2008年の47%から21%と大幅に減少しています。
段階的に廃止を支持する人は15%から36%と数を伸ばし、
現在の原子力発電能力を維持させると答えた人は33%から36%に微増しています。


フィンランドでは過去10年間日本との貿易額は減少を続けており、
50%を占める林業を除いて、同国に与える経済的な打撃は少ないと見られています。
ただ津波による原子力発電所の事故は、
この国のエネルギー政策に大きな影響を与える可能性を秘めています。
事故直後に環境保護団体は、原子力発電を推進する現政権を非難する声明を発表しました。
また野党第一党Suomen Sosialidemokraattinen Puolue(SDP,社会民主党)の党首Jutta Urpilainenは
地震を含む原子力発電の安全性についての会合を開き、
Vasemmistoliitto(左翼同盟)のPaavo Arhinmäkiは、
建設予定の2基について改めて反対をであることを表明しました。
与党Suomen Keskusta(中央党)議員で環境大臣のPaula Lehtomäkiは、
日本の事故が同国の原子力発電所建設計画に影響を与える可能性を示唆しています。
現在フィンランド国内には原子力発電所は2カ所合計4基が稼働中、1基が建設中です。


原子力の問題は詳しく報じられていますが、
被災地の状況については日を重ねるたびに少なくなっています。
震災前からの話題であったリビア情勢が緊張を増すなかで、
外国にはこの被災状況がそこまで伝わっていないのでは、という印象があります。
それでも北欧各地で募金活動やチャリティーイベントが開催されています。
オスロではA1、Alexander With、D'Sound、Maria Haukaas Mittet、TNT
Venke Knutson、Wigwamといった面々が参加したGift to Japanという慈善コンサートが行われました。