運命の人

たぶん最初の言葉は「は?」 hs.fi


ヘルシンキで開催されるIHME Contemporary Art Festival(モダンアート・フェスティバル)では、
あなたがお土産に購入したものが無料になるかもしれません。
今年の1月26日Hakaniemen Kauppahalliにあるチーズ屋でそれは起きました。
「0EURになります」
会計をした店員はこう言いました。
ハラぺーニョ・チェダーチーズを手にやってきた女性はショックを受けているようで、
彼女が出来ることといえば店員を凝視することと
「なんて言ったの?」ということしかありませんでした。
「代金はいりません」店員は陽気に答えます。
「え?何?どういうこと?」
このような取り留めのない会話が続けられます。


ひとついえることは、今日そのお店は無料だということです。
このお店の15時以降の会計は、
主催者であるthe Pro Arte Foundationが事前に小売店に対して支払った金額を超過しない限り、
一切代金は発生しません。
これは昨年の9月にある店舗で初めて行われた企画で、
今後はフィンランド全域で行われる可能性もあります。
しかし残念ながら、どのお店で実施されるのかは消費者は知ることは出来ません。
突然そのお店が無料店となり、お客は0EURと書かれた領収書を手にするのです。


これを企画しているデンマークの芸術集団Superflexは、
慣習的な商業構造に疑問を持たせるのが狙いだとしています。
つまり、 商業は伝統的な市場経済の原則に基づいて行われる必要があるのか、
あるいはお金の代わりにサービスで品物を交換することは可能なのか、
それを熟考する機会にしたいようです。
彼らはヨーロッパや日本にある免税店のアイデアを元に、
2003年以降デンマークとドイツ、日本でこの企画を実施しています。


世界のあちこちで見られるようにフィンランドでも混乱が見られたようです。
「夢を見ているんだわ」
友人のワインパーティーに参加するためにmanchegoとbrieを手にした女性が言いました。
それもそのはず、彼女は宝くじに当選したようなものです。
フィンランド人の特徴として、彼らは無料と聞くと茫然自失となるようです。
「耳にしたことが信じられないのね」先程の店員は言います。
無料だということが判明しても、フィンランドのこのチーズ屋に長い行列は発生しませんでした。
ドイツのBremenでは小さなスーパーに知人が大集合しましたが、ここでは違うようです。
女性は友人を呼ぶのではなく、
信じられないという表情で手にした領収書を確認し続けています。
「違う!8.2EUR(930円)以上はするわ。
だって5種類のチーズを購入したんだから」彼女は独り言を続けています。


日本でこの恩恵を受けた人はだれでしょうか。
運命の人 / スピッツ 1997年