Revolutionary Generation

投票者数354万人投票率86.9%が出した結論は。


9月15日デンマークでは総選挙(定数179)が行われました。

  • 以下は選挙結果です(政党名につく国名は略)。 
政党名
日本語名(略号):政権関係 選挙前議席 得票率(%) 獲得議席
Venstre. Danmarks Liberale Parti
左翼党(V):与党 46 26.7 47
Socialdemokraterne
社会民主党(S):野党 45 24.9 44
Dansk Folkeparti
国民党(DF):与党 25 12.3 22
Radikale Venstre
社会自由党(RV):野党 9 9.5 17
Socialistisk Folkeparti
社会主義人民党(SF):野党 23 9.2 16
Enhedslisten - De Rød-Grønne
赤緑連合(EL):野党 4 6.7 12
Liberal Alliance
自由同盟(LA):与党 5 5 9
Det Konservative Folkeparti
保守党(KF):与党 18 4.9 8
Kristendemokraterne
キリスト教民主党(K):与党 0 0.8 0
その他(Færøerne:フェロー諸島) 2 ### 2
その他(Grønland:グリーンランド) 2 ### 2
与党 94 ### 86
野党 81 ### 89

Lars Løkke Rasmussen現首相擁する左翼党は議席数こそ1伸ばしましたが、
連立政党が数を落としたことで野党転落が確実となりました。
1210億DKK(1兆6千億円)まで膨らんだ財政赤字と景気の停滞に対する有力な政策が打ち出せなかったこと、
公共部門の効率化により教育や福祉などのサービスが低下したこと、
Løkke政権の敗因としてはこれらが挙げられます。
また移民政策において国民党が望む強い規制が国民からは敬遠されたともいえます。
「今夜の結果について、デンマークの民主主義に敬意を払います。
デンマークが前進するのであれば、我々は譲ります」と選挙後にLøkke首相は述べています。


結成以来議席増を続けていた国民党は初の後退となりました。
メディア上では良くも悪くも政治家一の人気を誇るPia Kjærsgaardでしたが、
支持基盤としていた都心部での求心力が衰退したことが結果に現れています。
ノルウェー地方選挙でFremskrittspartiet(進歩党)が後退したように、
連続テロ事件後に広まった不信感が右傾化の流れを上回ったといえます。


社会民主党は選挙戦終盤に失速し戦前の予想を下回る結果となりましたが、
農村部からの熱い支持を受け目標にしていた与野党逆転は達成しています。
党首別の得票数で見ると前回よりも得票を減らし4番目でしかない点や、
選挙戦でも課題であるリーダーシップに不安が見られたものの、
デンマーク初の女性首相となるHelle Thorning-Schmidtへの期待は高まっています。
「今日はデンマークの変革の日です。準備は整いました」と彼女は話しています。


今回の選挙で大躍進を遂げた赤緑連合は都心部の若者を中心に支持を集めました。
各党代表者による最後の討論会では26歳!!のJohanne Schmidt-Nielsenが大活躍を見せ、
ほぼ全てのメディアからの称賛もあり世論調査が急騰、更なる議席獲得も予想されました。
ただ翌日にはTwitter等のネット上で大バッシングに晒され討論会分の支持は消え去りました。
政党としても彼女自身にとっても若さが露呈した選挙だったといえます。


179人の当選者を様々な角度から見てみましょう。
今選挙の最年少当選者は社会自由党のJeppe Mikkelsenで20歳。
彼は興奮した様子でこう話しています。
「シュールです。走り回って叫んでいます。
母や泣いているし、30分も経たないうちにメールが100通以上来ました」。
女性の最年少は同所属のLiv Holm Andersenで24歳です。
年齢が若いことで周囲から不安の目で見られることについてこう反論します。
「経験は仕事について長時間働くことで得るものだとは思います。
けれども私は教育では沢山の経験を積んでいますし、
なによりも感覚としては現役世代に近いものがあります」。
反対に最年長はPer Stig Møllerの69歳でした。
当選者の平均年齢は44歳、最も大きなグループは40代です。
男女別に見ると男性108人、女性71人となります。
最も女性の比率が高いのは社会主義人民党で56%でした。
移民背景を持つ議員は前回と同じく4人です。


国内メディアの反応はといえば、
同国初の女性首相誕生を祝福しているものの、課題は多いという見方が多数です。
『Information』は長期に渡った中道右派政権を批判するように
「下品な外国人政策の10年を経て新しいデンマークが始まる」と書いています。
『Jyllands-Posten』は社会自由党と赤緑連合の躍進に着目し、
「Thorningは勝者であるがそれは犠牲を多く払った上であり、
これからは駆け引きが重要になるという点では敗者である」としています。
『Berlingske』は「将来の福祉に対する野党の経済計画は一貫性に欠ける」として
政党間の調整が非常に困難な作業であることには変わりないとしています。
これらの評をまとめたような記事を書いたのは『Politiken』です。
「昨日はよいパーティーだったが、二日酔いも激しいものである」。


この選挙に合わせて学生選挙も行われています。
これは義務教育と中等教育課程の13〜20歳の生徒1万5千人を対象としています。

  • 以下はその結果です(白票:7.8%)。
日本語政党名 得票率(%)
社会民主党 15.7 社会自由党 12.2 社会主義人民党 11.5 赤緑連合 10.1
左翼党 19.1 自由同盟 10.6 国民党 6.3 保守党 5.1 キリスト教民主党 1.5

合計すると野党49.5%,与党42.6%。子どもの間でも与野党逆転が起きています。


写真
選挙の歴史 1950年以降の政府 ラジオ討論会 地方投票所
勝利の瞬間 選挙後の討論会 勝者と敗者 選挙戦

Revolutionary Generation / Public Enemy 1990年