雑念エンタテインメント

お隣からの手紙。 svd.se


デンマークの首都であるコペンハーゲンでは、
1日に数十万人以上が自転車に乗り計120万kmを走破しています。
そういった意味では9月に行われた
UCI Road World Championships(世界選手権自転車競技大会ロードレース)は、
800人の出場者しかいないという見方も出来ます。
ただこれはデンマーク史上最大のスポーツイベントです。
「これは大イベントです」と大会最高責任者であるJesper Worreは言います。
街の中心部市庁舎の前にある【Hej cyklist】は
道路上を通過した自転車数を計測するもので装置で、
今年は9月地点で200万台を突破しています。


デンマークにおける自転車は単なる移動手段の道具ではなく、
ライフスタイルに欠かせないものです。
そのような強力な地盤があることもあり、
デンマークでプロロードレーサーがスーパースターと称賛を受けるのは当然なことといえます。
よってPost Danmark Rundtという大規模なレース、
それに出場するチームSaxo Bank-SunGard(SS)、そして今回のような世界選は、
自転車好きのスウェーデン人が羨望の眼差しを送る出来事といえます。
かつてスウェーデンでもPostgirot Openが開催されていました。
規模は小さくなりましたが現在でも熱狂的な人気を誇るTour of Jämtlandが行われています。
スウェーデンにおける自転車はデンマークとは文化や伝統が全く異なるものです」。
スウェーデン人でSSに所属しデンマークの自転車熱を内から体験している
Gustav Larssonはこう話します。


自転車に対する思いと同様に、
ドーピングに関してもデンマークスウェーデンでは考え方が異なるようです。
例えばスウェーデン人のNiklas Axelssonが2度目の違反を犯したとき、
彼は直ぐに表舞台から身を退きました。
一方デンマーク人のMichael Rasmussenは現在も競技を続けています。
彼は2007年のTour de France(HIS,ツール・ド・フランス)で総合首位に立ちながら、
ドーピング検査を逃れたとして所属していたRabobankを解雇されたにもかかわらず。
Worreもまた現役中の1992年、ドーピングを使用したことを告白しています。
彼自身その罪から解放されたわけではありませんが、
今はドーピング問題にとても厳格な態度で挑んでいます。
これはスポーツ界のひとつの論争の的になっています。


SSのGMであるBjarne Riisも同じことがいえ、
ツールで総合優勝した1996年にドーピング使用したことを2007年になって認めました。
彼の地位は揺らいだように見えましたが、現在でも強固なままです。
告白した翌年のツール開催期間中に当時の同国首相が彼の元を訪れ、
デンマーク人にとってRiisは誇りであり誰も彼の成功を奪い取ることは出来ない、
と賛辞を送ったほどです。
また今年のGiro d'Italia開幕前には前首相のLars Løkke Rasmussenも彼に会い激励しています。


これは同国の国会議員の63%は毎日自転車を利用しているように、
デンマークにおいて政治と自転車が密接な関係を示しているともいえます。
同国の総選挙は世界選を避けるように行われ、
世界選のコース設定を変更することなく大会は行われました。
デンマーク人のほとんどは大会中の道路封鎖と自動車の使用停止を支持し、
代わりに彼らは自転車に乗ることを選択しました。
それだけではありません。
気温10度の霧雨の中ÖrstedsparkenにはJørgen Leths作の自転車映画
『En forårsdag i helvede』を見るために300人近い観衆が集まり2時間を過ごしました。
監督が登場すると観衆は暖かい拍手で彼を向かい入れます。
そして上映後はそれぞれの家路に就くのです。
もちろん自転車を利用して。


なおLøkke前首相は大の自転車好きとして知られていて、
大会のコース全長14kmを走行し23分03秒(平均時速36.5km)で完走しています。
これは速いですよね。

雑念エンタテインメント / RIP SLYME 2001年