My Dear Country

今回はデンマークスウェーデンの事件報道を取り上げたいとおもいます。
まずはこの二カ国でどのような事件が起きているのか理解するために、
いくつか挙げてみることにしましょう。

  • 婦女暴行容疑で元恋人を逮捕 Kristianstad

19歳の女性が暴行を受けたとして元恋人を告発しました。
彼女は暴行によって喉を負傷したため話すことが出来ませんが、
21歳の元恋人は性的暴行・誘拐・殺人未遂等の容疑で取り調べを受けています。

風刺漫画家宅に侵入したソマリア人の男は祖国へ返送される予定でしたが、
弁護士が返送理由の詳細が明らかにされていないとして上告しました。
28歳の男性は侵入した後駆けつけた警察官に攻撃し逮捕されました。

  • 子どもを殺した父親が自殺を図る Køge

自宅で子ども二人を刺し絞め殺した45歳の男性は自殺を図りましたが、
帰宅してきた妻に発見され一命は取り留めました。
ごく一般的な父親だったということですが、動機は判明していません。

市内のホテルで女性に性的暴行を加えた容疑で逮捕された60代の男性(実名)は、
長年警察に勤め幹部として国際的な会議にも出席していました。
別件でも捜査が進められていますが、彼は容疑を否認しています。



私が知る限り、この2カ国(おそらく他の北欧も)ではいくつかの例外を除いて、
メディアが容疑者と被害者の実名や顔写真を公表することはありません。
顔写真が公開された場合でも容疑者・被害者を問わず、モザイク加工されている事が多いです。
例外は容疑者が逃走している事件や
2008年フィンランドのKauhajokiで起きた銃乱射事件
(事件性と被疑者死亡によって公表されたと思われます。)、
2003年に起きたスウェーデンの政治家Anna Lindh暗殺事件、
今回起きたストックホルムの暴力事件など一部に留まります。


この事件が実名報道の対象になったことも異例であると伝えられ、
公表したタブロイド紙は社会的地位が高い人物による犯罪だからと述べています。
ただ検察官は直ぐに報道を制限するように裁判所に届けを出しました。


Anna Lindhの事件では真犯人が逮捕される以前に拘束された男性がいて、
当時35歳だった彼の情報は連日メディアに取り上げられていました。
すべての疑いが晴れて釈放される後、
彼は容疑者扱いをしたメディアを相手取り訴訟を起こしました。
先日その裁判が終わり、
メディア側が男性に15万sek(約180万円)を支払うよう判決が言い渡されました。


容疑者と加害者の表現方法は客観的です。
例えばKøgeの事件では各メディアとも悲劇とは表現していますが、
被害者のこどもについて、
〔いつも明るく元気な子〕とか〔将来の夢は歯医者さん〕という表現はありません。
反対に加害者の父親についても、
〔昔から内向的であった〕とか〔悪事ばかり働いていた〕という記述はありませんでした。
扇動的な報道は少ないといえます。


ただ容疑者が移民系である場合は異なります。
アメリカやフランスの報道スタイル、つまりはメディアの国際的な標準となっているように、
移民であることが強調されて伝えられることもあります。
例えばAnna Lindhの事件の犯人はスウェーデンの市民権を持っていましたが、
セルビア系移民であることが強調されていました。


日本の事件報道と比べてみては如何でしょうか。