ジェット

のどかだった空が帰ってきたとは誰も言いませんね。


アイスランドのEyjafjallajökull氷河火山の噴火が
ヨーロッパ各地に甚大なる被害を与えています。
3月に起きた1度目の噴火時には影響は国内に限定されていたため、
3万円を支払えば溶岩が間近で見られるツアーも開催され、
外国人観光客からの人気を集めていました。


しかし2度目の噴火(違う箇所)は、ヨーロッパの現代機能を麻痺させるには十分なものでした。
当然ニュースではどこでもトップの扱いで取り上げられています。
アイスランドがこれほどの国際的な注目を浴びるのは、
1986年にレイキャヴィークで行われたレーガンゴルバチョフ会議以来だということです。
同国の人口を遥かに上回る人に影響が出ているだけに、
アイスランドのイメージを損ねるものに成りかねない、と多くの人は心配しています。
そこで国内で足止めされている観光客に対しては、
美術館や博物館、公共交通機関の利用を無料あるいは格安で提供しています。
そして観光協会は観光客離れを食い止めようと、
火山近くのごく一部を除けばアイスランド内はいつも通りの生活をしている
と発表しています。


北欧各国の被害状況はといえば、
アイスランド国内では洪水の被害が各地で発生し道路や橋が破壊されるなどしています。
デンマークでは同国の経済損失はどれほどなのか調べたところ、
物資調達の遅れや会議の延期などにより1日当たり24億円以上の損失だと学者は見ています。
スウェーデンでは1万人を超える観光客が足止め状態にあっています。


この噴火を受けて北ヨーロッパのほとんどで現地時間15日木曜の午後から、
その翌日からは南ヨーロッパを除く各地で空港が閉鎖、
あるいはごく一部の運航に留まっています。
そのためにヨーロッパ全体で7割ちかい航空便の欠航が余儀なくされています。
よって各地で開催されている様々な行事に支障がでていて、
ポーランド大統領の葬儀、デンマーク女王Margretheの70歳の祝賀会、
各スポーツイベントへの参加や出席を取りやめる人が相次いでいます。
物流に関しても世界の4割にあたる貨物が各地で滞っている状態です。


今回の噴火の影響を一番に受けているとされる航空業界は、
近年原油価格の高騰やスペインのテロなどによって不振にあえいでいました。
そんななかでの今回の出来事は、会社の存亡に関わる問題となっています。
北欧を拠点とするスカンジナビア航空(SAS)は、
通常1日当たり1億4000万円の売り上げを記録していますが、
現在は1日当たり2億円の赤字だということです。
これを受けて2000人以上の職員に対する一時解雇を検討している状況だということです。
ある格安航空便会社のCEOは、
「どの会社も2009年は最悪の売り上げだった。
飛行機を飛ばせない状況が続けば今年は更に悪化する。
我々は低コストで高マージンだから生き残るだろう」と述べています。


オランダとドイツの航空会社が試験飛行を行い、
運航に関して問題はなかったという結果が報告されています。
今回の火山灰への警戒は過剰すぎるとして欧州委員会へ異議を唱える航空会社もいます。
しかしフィンランドで戦闘機によるテストが行われたところ、
エンジンの内部に火山灰らしきものが蓄積された様子が確認できました。
汚れとして除去できるものなのか、部品の交換が必要なのか調査しているようです。
飛行機のエンジンが石や灰を吸い込むことで加熱され、
最悪の場合爆発を引き起こす恐れもあります。


人間にとっても火山灰は好ましいものではなく、
呼吸器系に問題を抱えている人は特に注意が必要です。
せきや喉の痛み、頭痛など体調の乱れを感じたら、
直ちに室内に入り外出を控えるよう研究者は呼びかけています。
動物や作物への影響も心配されています。
家畜が体内に火山灰を含むことにによる質の低下や、
野生の動物が栄養不足に陥ると予想されています。
また生育不良となった野菜の価格高騰など、
日常に置いてその影響を回避することは困難といえるでしょう。


火曜日から運航可能な範囲が拡大されたようで、
各航空会社は木曜日あるいは土曜日から通常通りの運航を計画しています。
しかし火山灰の放出は止まる気配が見られず、
特にイギリスでは通常運航できるまでには時間が掛かりそうです。
この火山の噴火活動およびそれによる航空網の乱れがいつ止むのか、
それは誰にもわかりません。


一部では9・11以降最悪という言われ方がされていますが、
この表現には疑問を抱いてしまいます。
史上最悪とだけで今回の混乱ぶりは十分伝わると思うのですが。


長いついでに最後はEyjafjallajökullの発音をご確認ください。