Lazy Gun

JOAK-TV。


「こんにちは。こちらはテレビです」。
これは1948年デンマークで初めてテレビの試験放送が行われた際、
ホスト役を務めたLily Brobergが最初に口にした言葉です。
1951年10月2日Danmarks Radio(DR,デンマーク放送協会)が本放送を開始したとき、
受信契約をしたのはわずか800世帯でした。
それから60年。
その存在は善か悪かのような議論や白黒から薄型へという変化はあれど、
現在に至るまでデンマーク人を魅了し続けています。


コペンハーゲン大学メディア学科の准教授は、
正確な情報の収集能力は今日に置いてもテレビは他メディアに優るといいます。
「例えばネット上で9.11の攻撃を見ていたとしても、
それは孤独な経験でしかありません。
それがテレビのニュースとして流れると
ある家族はデンマークと関係していると伝えられるのです。
テレビは他メディアよりもより効率的な方法で物事を捉えることが出来ます。
テレビを付けるということはコミュニティに接続したということです」。


テレビは単にデンマーク人の間に新しいコミュニティを生み出しただけでなく、
現在では社会全体を繋ぐ巨大な役割を担っているといえます。
1951年には800世帯の楽しみでしかなかったものが、
1960年代の経済成長によってテレビは民衆の宝へと変化します。
テレビは新聞とは異なり映画や劇、
ニュースといった様々な情報を流すことで文化への接触を容易にさせます。
これにより情報と文化的な生活はブルジョアだけのものではなくなったといえます。


2011年、デンマーク人が1日にテレビを視聴する時間は3時間といわれています。
「今日娯楽装置として機能するテレビの誕生前と現在とを比較すると、
エンターテイメントの幅は莫大な広がりを見せています」
と同大学の別のメディア研究者は言います。
彼はテレビと視聴者という関係が築かれた1951年に劇的な変化があったことを強調します。
ただ他のメディア同様善の発展があるように、悪の発展も残しています。
「娯楽の発展によって事実に基づく番組やリアリティ番組等が増加し、
いくらかの視聴者は現実とそういったものを切り離せずにいます。
また公共の問題に関する議論の回数が減るなど、
テレビはあらゆる面で影響を与えています」。


15年程前テレビはインターネットに取って代わられると予想されましたが、
テレビを時代遅れの技術と称した専門家達は今再考が迫られています。
「見るか見ないかの選択でテレビが勝利しているのは間違いありません。
テレビの視聴時間は増加を続けています。
1960年代半ばには30分程度だった視聴時間が現在では3時間を超えています」。


写真
テレビの60年その1 その2

Lazy Gun / Jet 2003年