スチャダランゲージ

手を挙げろ?


Danmarks Jurist- og Økonomforbund(Djøf)の調査では、
デンマークの学生は講義中に何かわからないことがあったとしても、
6割の人は教授などに質問をすることはない、という結果がでました。
学生は少人数制クラスと議論飛び交う教室は居心地が悪いと考えているようです。
ただ専門家は、
対話は教育上不可欠なものであり、大学は早急な対策を講じるべきだとしています。
以下はその調査結果です。

  • 授業中にわからないことがある場合、どれくらいの頻度で質問をしますか?
ほぼ毎回:6% 頻繁に:33% ごく稀に:50% しない:11%
  • (61%の人に質問)なぜあなたは質問をしないのですか?
時間がない:12% 恥ずかしい:37% 自分で解決する:41% その他:10%

Roskilde大の学生はAarhus大の学生より頻繁に質問をする。
女性は男性よりも質問することが恥ずかしいと感じている一方では、
男性の方が女性よりも自分で解決する割合が多い。


これは法学・経営学政治学を専攻する学生663人を対象に行われたものです。
同組織で学生部門を担当する副部長はこの結果に驚き懸念を抱いています。
「ほとんどの人がテストとスライドで構成された授業を受けていますが、
講師と学生間の対話の時間が十分に確保されていません。
講義室にいる学生の数が増えるほど、
学生は質問することが恥ずかしいと感じているのは明らかです。
そうした状況は明らかに教育の質が低下しており、不幸な結果といえます」。
彼女はクラスを少人数制にすれば学生の好奇心も向上すると考えています。


Danmarks Pædagogiske Universitet(DPU,デンマーク教育大学)の
研究者もまたこれらの数字に危機感を持っています。
「たとえ学生の数が10人であろうと200人であろうと、
講師は学生と対話することが重要です。
そうでなければ学生の過小評価や彼らの能力以上のものを押しつける、
という危険性が生じてきます。
質問をしやすい環境を作ることも大切なことであり大学側は何らかの対処が必要です」。


あれは勘弁願いたい。

スチャダランゲージ〜質問:アレは何だ?〜 / スチャダラパー 1991年

なぜか今日は

数字マジック。


フィンランドは統計上、ヨーロッパ内で暴力犯罪が多い国として位置づけられています。
ただこうした数字にはしばしば注釈や隠されたものが存在しがちです。
例えばフィンランドEU諸国では殺人に関わる者のかたちが異なります。
フィンランドの典型的な殺人者は中年でアルコールを多量に摂取する人で、
犠牲者も中年で酒飲みの人です。
スウェーデンでは少し似た傾向にありますが、オランダでは全く異なります。


これはOikeuspoliittinen tutkimuslaitos(Optula,国立法政策研究所)と
Brottsförebyggande rådet(Brå,スウェーデン全国犯罪防止協議会)、
そしてオランダのLeiden大学の合同研究で明らかにされたものです。
フィンランドで起きた殺人のうち、
組織犯罪やその他の犯罪行為が関係する割合はわずか6%に過ぎません。
これをオランダで見ると30%以上という結果が出ており、近年は増加傾向にあります。
したがってこのような犯罪が解決する割合は、
北欧諸国よりオランダの方が著しく低くなっています」
とOptulaの調査員のひとりは言います。
フィンランドで頻繁に殺人に使用される武器は包丁で、
犠牲者は犯人の知人、どちらかの自宅で行われた飲み会で事件が起きています。
スウェーデンフィンランドとは異なり、
オランダでは加害者の多くは他国出身の人です」。
ではスウェーデンはどうでしょうか。
フィンランドとは加害者・被害者・状況は似た傾向にあります。
ただスウェーデンの殺人事件は外国出身の加害者によるものが目立ちます。


このように3ヶ国には類似するもの、相違するものがあります。
殺人事件の被害者が女性である場合、
加害者が現在もしくは過去のパートナーである確率は70〜85%です。
そして場所は室内、通常は女性の家で犯行が行われています。
ナイフや銃器類を用いない殺人事件は全体の10〜18%です。
フィンランドにおける殺人事件の被害者で外国起源の人の割合は4%ですが、
オランダの場合には43%に跳ね上がります。
フィンランドの加害者と被害者の平均年齢は42.1歳、オランダは37.4歳。
フィンランドで銃器を保有している世帯の割合は40%、オランダは5%ですが、
銃による殺人事件の割合はオランダの方が多いという結果が出ています。


なぜオランダだったのでしょうか。

なぜか今日は / Birthday 2011年

雑念エンタテインメント

お隣からの手紙。 svd.se


デンマークの首都であるコペンハーゲンでは、
1日に数十万人以上が自転車に乗り計120万kmを走破しています。
そういった意味では9月に行われた
UCI Road World Championships(世界選手権自転車競技大会ロードレース)は、
800人の出場者しかいないという見方も出来ます。
ただこれはデンマーク史上最大のスポーツイベントです。
「これは大イベントです」と大会最高責任者であるJesper Worreは言います。
街の中心部市庁舎の前にある【Hej cyklist】は
道路上を通過した自転車数を計測するもので装置で、
今年は9月地点で200万台を突破しています。


デンマークにおける自転車は単なる移動手段の道具ではなく、
ライフスタイルに欠かせないものです。
そのような強力な地盤があることもあり、
デンマークでプロロードレーサーがスーパースターと称賛を受けるのは当然なことといえます。
よってPost Danmark Rundtという大規模なレース、
それに出場するチームSaxo Bank-SunGard(SS)、そして今回のような世界選は、
自転車好きのスウェーデン人が羨望の眼差しを送る出来事といえます。
かつてスウェーデンでもPostgirot Openが開催されていました。
規模は小さくなりましたが現在でも熱狂的な人気を誇るTour of Jämtlandが行われています。
スウェーデンにおける自転車はデンマークとは文化や伝統が全く異なるものです」。
スウェーデン人でSSに所属しデンマークの自転車熱を内から体験している
Gustav Larssonはこう話します。


自転車に対する思いと同様に、
ドーピングに関してもデンマークスウェーデンでは考え方が異なるようです。
例えばスウェーデン人のNiklas Axelssonが2度目の違反を犯したとき、
彼は直ぐに表舞台から身を退きました。
一方デンマーク人のMichael Rasmussenは現在も競技を続けています。
彼は2007年のTour de France(HIS,ツール・ド・フランス)で総合首位に立ちながら、
ドーピング検査を逃れたとして所属していたRabobankを解雇されたにもかかわらず。
Worreもまた現役中の1992年、ドーピングを使用したことを告白しています。
彼自身その罪から解放されたわけではありませんが、
今はドーピング問題にとても厳格な態度で挑んでいます。
これはスポーツ界のひとつの論争の的になっています。


SSのGMであるBjarne Riisも同じことがいえ、
ツールで総合優勝した1996年にドーピング使用したことを2007年になって認めました。
彼の地位は揺らいだように見えましたが、現在でも強固なままです。
告白した翌年のツール開催期間中に当時の同国首相が彼の元を訪れ、
デンマーク人にとってRiisは誇りであり誰も彼の成功を奪い取ることは出来ない、
と賛辞を送ったほどです。
また今年のGiro d'Italia開幕前には前首相のLars Løkke Rasmussenも彼に会い激励しています。


これは同国の国会議員の63%は毎日自転車を利用しているように、
デンマークにおいて政治と自転車が密接な関係を示しているともいえます。
同国の総選挙は世界選を避けるように行われ、
世界選のコース設定を変更することなく大会は行われました。
デンマーク人のほとんどは大会中の道路封鎖と自動車の使用停止を支持し、
代わりに彼らは自転車に乗ることを選択しました。
それだけではありません。
気温10度の霧雨の中ÖrstedsparkenにはJørgen Leths作の自転車映画
『En forårsdag i helvede』を見るために300人近い観衆が集まり2時間を過ごしました。
監督が登場すると観衆は暖かい拍手で彼を向かい入れます。
そして上映後はそれぞれの家路に就くのです。
もちろん自転車を利用して。


なおLøkke前首相は大の自転車好きとして知られていて、
大会のコース全長14kmを走行し23分03秒(平均時速36.5km)で完走しています。
これは速いですよね。

雑念エンタテインメント / RIP SLYME 2001年

Le dîner

えも言われぬ恐怖。


風刺画家のKurt Westergaardは、
デンマークで起きたムハンマド風刺画問題で話題の中心にいたひとりです。
彼はターバンが爆弾に模された男を描いたことで国際的に知られ、
それを掲載した日刊紙『Jyllands Posten』と共にテロの標的になっています。
実際自宅を襲撃される事件も起きています。
そんな彼を取り巻く環境は国境を越えても変わりません。


9月13日彼はノルウェー王宮の隣に位置するLitteraturhuset(文学の家)を訪れ、
友人と共に本の出版イベントを行う予定でした。
当日これまでの経緯から警察は周辺を厳重に警戒しました。
当局関係者は明言を避けましたが、
Norsk Rikskringkasting(NRK,ノルウェー放送局)によると、
イベントに対する攻撃計画があったということです。


結局イベントはWestergaardの体調不良に中止となりました。
NRKで本人が語ったところによると、体調不良を理由にイベントを中止すると決定した後、
警察は殺人予告があったことを告げてきたということです。
そして直ちに出国することを勧めてきたようです。
「これはPolitiets sikkerhetstjeneste(PST,警察監視サービス)と
Politiets Efterretningstjeneste(デンマーク警察・情報庁)が決めたことです。
だから私は直ぐに帰路に就きました」。


それもまた表現なのでしょうか。

Le dîner / Bénabar 2005年

Now I'm a Farmer

地物を食べよう。


「10年前のトレンドは有機栽培でした。今は地元食品です」。
とKungliga Tekniska högskolan(KTH,スウェーデン王立工科大学)の農業研究者は言います。
Lantbrukarnas riksförbund(LRF,全国農業組合)によると、
国内で自家野菜を販売する直売所の数は850カ所で2007年以降25%増加しています。
また生産したものを加工処理する施設に投資を行う農家も増えています。
チーズやソーセージ等の加工品を販売する農場の数は、
2007年の602件から900件以上と数を伸ばしています。
「組合員の多くは更なる展開も可能だと考えており、
継続的な成長も見込めるとしています」とLRFのアナリストは言います。


こうした開発の背景にはスウェーデン人の消費者行動も関係しています。
Handelns Utredningsinstitut(HUI,商取引調査機関)が今年行った調査では、
40%の人が少なくとも週1度は地元の食材を購入しているということです。
これは1000人以上を対象に行われたものです。
地元品を選択する理由として一番多かったのは環境への配慮であり、
実に67%の人がこう答えています。
もう一つ重要な回答としては地元にお金を落とすというものです。
こうした環境意識の変化は有機食品のシェア拡大にも反映されています。
Jordbruksverket(農業庁)の分析では、
地元食材あるいは遠くの場合には有機栽培を選択することには関連性があるようです。
「こうした考えの根源には気候変動問題があると見ています。
食品がどれだけ移動しているかという問題が有機生産に付け加えられました」
と農業庁の職員は言います。


先程の農業研究者は同僚と共に
地元食材と有機農場はどのような影響を与えるのかを研究しています。
有機栽培と地元食材というトレンドはスウェーデンの農村部を変える、
彼女はそう考えています。
有機農場で販売されているものは地元の市場とは異なります。
彼らは様々な品種を栽培してはその規模を拡大していきます。
それらは消費者が求めるものであり、生物多様性にも貢献しています」。



Now I'm a Farmer / Who 1974年

La Metro

上陸しないかな。


2001年9月3日にデンマークで初めての無料新聞『MetroXpress(以下M)』
が創刊されてから10年が経過しました。
その存在はひとつの爆弾のように、
市民の新聞を読む行為とこの国の新聞業界に善と悪の改革をもたらしました。
今日『M』は同国最大の発行部数と読者数をほこり、高い収益率を持つ無料新聞でもあります。
特徴的な点は、駅で手にとり通勤や通学の最中に読むことが可能で、
手軽にニュースの概要を読みとることが出来ることが挙げられます。
このスウェーデンで誕生した業界の風雲児は、
ここデンマークで数十万人の朝の習慣のひとつに欠かせないものになっています。


『M』はデンマーク新聞市場に高い競争力をもたらす。
こう踏んだ日刊紙『Berlingske Tidende』を有するBerlingske Mediaは
それから数週間後の9月24日に無料新聞『Urban』の発行を開始します。
2つの無料新聞の誕生はデンマークの新聞戦争の幕開けとなりました。
そもそも『M』はスウェーデンでは『Metro』という名前で発行されていますが、
デンマークではBerlingskeが商標権を所有しているため
名前の変更を余儀なくされたという経緯があります。


2006年には無料新聞の競争が激化します。
アイスランド投資会社を背景に持つ『Nyhedsavisen』が誕生、
日刊紙『Jyllands-Posten』と『Politiken』を保有する
JP/Politikens Husも『24timer』を創刊させています。
Berlingske Mediaは『DATO』の発行も開始し新聞業界はかつてない賑わいを見せました。
ただこうした状況は長くは続かず『Nyhedsavisen』と『DATO』は巨額の負債を抱え、
それぞれ『M』と『24timer』に吸収されています。


ジャーナリストの男性は、
『M』のような手軽な無料新聞と全国的に読まれる日刊紙とでは、
それぞれ異なる背景があり同一のものではないといいます。
「しかしながらこの国最初かつ最大の無料新聞である『M』は、
ネットやテレビなどとの競争が激しい今日でも、
デンマークでは新聞読者が減少していないことに大きく貢献しています。
若者や異なる民族背景を持つ者に新聞を読む習慣を広めたことは称賛に値します」。


無理ですね。

La Metro / Brigitte Fontaine 2006年